AMBIVALENCE

2020/05/03 09:00



あらすじ

少し未来の話。

この時代、全ての人類は「データ」で管理されている。
生まれたときにランダムに選定された「数字」を割り振られ、死ぬまでその番号で識別され続ける。

生活環境の悪化と、デジタル技術の進化により、人は一生のほとんどを外に出ることなく「ただ生かされている」状態。
食事は栄養価だけを重視したゼリー状のものが自動でカプセルハウスまで配送される。
定期的な電気刺激でカラダを動かし、学習から娯楽まで、全てがコンピューター管理。
睡眠すらもデジタルで完全にコントロールされ、毎晩見る夢は映画やDVDを選ぶようにセレクトできるようになっている。

この世界では、全ての娯楽や出会いは「万能ネット空間」の中で行われる。
そこでは「記号化されたアバター」として出会い、交流をすることができる。
スポーツやボードケーム、かつてのテレビゲームなどもVR(バーチャルリアリティー)の発達で、アバターのまま体感するのだ。

そして、この世界の人々は、人間同士の「恋」を忘れている。
なぜなら、コンピューター制御された理想のバーチャル恋人が全て自分の好みの姿でそばにいてくれるからだ。

生殖活動も性病感染や、染色体異常のリスクをコントロールするため、全てが体外受精で行われる。
試験管ベイビーとして生まれ、コンピューター管理の下、一人で育っていく。
だから両親の顔も記号のようなアバターでしか見ることができない。

そんな世界において、識別番号:142857−284は憤りにも似た葛藤を抱えて生きている。

何かが違う。
何かが足りない。
そんな漠然とした不安と焦燥の中で、本来なら見るはずのない夢を見る。

それは、遥か遠い昔の記憶。
良く知っている女性と一緒に過ごした、とても短く、とても甘い思い出。
それがあまりにリアルすぎて、284はその女性を探そうと思い立つ。

万能ネット空間で、必死にその人を探す284。
もちろん、そこにいるかどうかもわからない。
単なる自分の妄想かもしれない。
それでも、探さずにはいられない…

そして同じ頃、識別番号:142857−220も同じ夢を見ている。
確かに存在した、遠い遠い昔の記憶。
自分には、逢わなくてはならない人がいる。

しかし、コンピューターが制御する世界において、その出会いは簡単ではない。
検索画面は妨害され、警告のアラートが鳴る。

284も220も、お互いを知らないまま、ただ焦りが募っていく。

そんなある日、284のカプセルハウスに思いがけない来客がある。
アルビノのカラス。
偶然窓に降り立ったその真っ白な烏は、じっと西の空を眺める。

その烏を見て、284は不意に思い出す。
自分が会うべき人、220の顔と、約束の場所を。

出口の無い、ガラスの壁を打ち壊し、284は初めて外に出る。
無機質に並ぶカプセルハウスのタワー群と、その向こうに見える青い空。
初めて感じる自由は、不自由の中の自由からの解放であり、自由の中の不自由の享受でもあった。

やがて284は、西に向かって歩き始める。
向かうのは、約束の場所。

来世で、またね。と約束を交わした、世界樹の下へー

こうして、モノガタリは、動き出していく。



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